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ローソク

ローソクを
供える意味

私たち地球人は時代と国境を越えて、喜びや悲しみの時に必ずローソクを点してきました。
そして、世界のほとんどの宗教はローソクの明りの下で敬虔な祈りを捧げます。
日本人は神棚に神を、仏壇にご本尊をお祀りします。また、仏様になったご先祖の位牌を置いて感謝
のお祈りをすることを習慣として永く継承しています。そして「五供/ごく」として花、水、ご飯、香、
灯明を供えますが、ローソクに火を点すことにはどんな意味があるのでしょうか。

  • 炎には不浄を燃やし、魔を除き、周囲を清める働きがあります

    ローソクの灯には「燃焼する炎」としての要素と「周りを明るく照らす光」としての二つの要素がありますし、自らを燃やしながら周りを浄化し、辺りに光を送り続ける姿は「超我の奉仕」を象徴しています。

    仏教では苦しみの根源である迷いや煩悩を「無明/むみょう」という言葉で表現しています。そして、人生は苦しいことの連続だけれども、少しでも煩悩を鎮めて苦を減らす努力をしましょう、と釈尊は説いています。

    炎には不浄を燃やし、魔を除き、周囲を清める働きがあります。

    光は人間が煩悩の暗闇から脱却するための道を明るく照らし、仏の知恵と救いを表しています。

    だから、ローソクを供えることは、炎で周りの不浄を清め、苦しみから離脱するために煩悩の闇に光を当てる(知恵を以て悟りを開く)意味があります。


    さらに、ローソクの明りはご先祖様と現世の私たちを結ぶ架け橋ですから、この明りに依ってご先祖様は彼岸から此岸にやって来るし、私たちが彼岸に行く時もまた明りに導かれるのです。

  • 心の炎を鎮め、心が澄み、勇気が湧き出る。

    静かな灯をじっと見ていると心がどんどん澄んでいくのがわかるでしょう。炎として燃え盛る灯が、逆に心の炎を鎮めてくれるのです。煩悩の火がおさまれば、知恵が授かります。正しい判断が生まれ、自然に勇気が湧き出てきます。


    ダイアナ王妃を悼む英国民や9.11でアメリカ人があれだけの数のローソクを捧げて祈る光景を眼のあたりにして、彼らの心の中にも生きとし生けるものとして同じ感性や考えが宿っていると想わざるを得ません。むしろ、宗教を超えた領域の、人間としていとも自然な行為でありましょう。

  • どうぞ、真心を込めて、良いローソクをお供えください。

    ローソクを点すことは、静かな無の境地で仏に祈り、先祖に感謝の誠を捧げるために素直な自分の心を導き出す大事なプロローグの儀式と言えるでしょう。オン・オフによって点滅される電気灯に、ローソクの掛け替えのない役目と深い意味を見い出すことは不可能です。


    お釈迦様は八十才で入滅する時に「おまえたちは自分自身を灯明として生きなさい。決して他に頼るな」と弟子たちに遺言を残し、灯明を知恵や真理の象徴として遣っています。


    そして、仏教ではこの遺言を自灯明と言い、全ての教えの根幹に位置づけているのです。

ローソクの科学

ローソクの原料は?

六世紀に仏教と共に輸入された日本のローソク第一号は蜜蜂の巣から採る蜜蝋でつくられていました。さらに獣脂やまっこう鯨の頭蓋骨の中にある液体で捕獲後体温が下がると個体となって分離する鯨蝋、時代劇の画面に登場する和蝋燭は漆や櫨の実から抽る木蝋が原料です。おもしろいのは初夏に白い可憐な穂をつけるいぼたの葉を食べる介殻虫の分泌物(いぼた蝋)や牛脂や椰子に含まれているステアリン酸などいろんな原料でローソクはつくられてきました。


現在は原油からつくるパラフィンワックスが主原料として使われています。それはパラフィンが石油製品で比較的扱いやすいためと、凝固する時に体積が収縮するという特性があるからです。燭台の針に差して使う神仏用のローソクの穴はこの特性を利用してつくります。当社のローソクの融点は少し高目の六十度です。二本のローソクを拍子木のようにぶつけ合うとキンキンと金属音がします。

ローソクのつくり方は?

製造工程のイラスト

液状のワックスを型に流し込み、冷却して固化したものを型抜きしてつくります。タンクローリーで輸送された液体パラフィンワックスは、まず工場の大型タンクに貯蔵。必要量が各加温層にポンプで移送され、ここで用途に応じた温度に高めます。


例えば小ローソクなら155度、大ローソクなら135度のワックスが、正確に温度コントロールされた回路で端末の成型機まで届けられます。型流し、冷却、型抜き、芯切り、尻切りの作業はコンピュータが行います。


パラフィンワックスは温度や湿度、空気、金属などへの反応がたいへん敏感で、
正に「ワックスは生きている」という実感です。タンクやバルブ、配管は全てステンレスの密封回路でスチームによる集中管理方法をとり、原料の酸化劣化を防いでいます。肌の美しいローソクの冷却温度は18度が適正です。冷却水は、年間を通じて14度の富士山の湧水によって自然管理しています。

ローソクが燃えるのは?

ロウは個体のままでは燃えませんし、60度を超えて液体になっても燃えません。さらに高温になってガス化した時(約260度)はじめて燃えます。これは、ローソクを吹き消した直後の白いガスにマッチの火を近づけると、ボッと燃えるのでわかります。


まず、点火によって溶けたロウが毛細管現象で芯を上昇し、それが高温でガス化して燃えるのがローソクの燃焼の仕組みです。上部の皿の中へ、削ったクレヨンを少し入れてルーペで芯の根元の部分を見ると、ロウ液がわれ先に芯を昇ろうとしているのがよくわかります。

「立ち消え」というクレームは?

よく冬の再点火の時にこういったクレームを頂戴することがあります。みなさんは、ローソクに点火する時、ローソクのどの部分に火をつけるのでしょうか?ほとんどの方が、芯の、それも先端の部分に点火されます。すると、1ボーッと明るくなりますが、これはローソクが燃えたのではなく、芯自体が燃えている炎です。次に、この炎が2スーッと小さくなって消えてしまうかなと思う瞬間、3ボッと急に炎が大きくなります。実は、この3のボッの時が、液状のロウが芯を昇ってガス化した瞬間で、ローソクに着火した時なのです。


立ち消えというクレームを調査すると、芯の先端にチョッと点火したために、3の状態に到達する前に、芯だけが燃え切ってしまったか、2の時に風が炎にあたり消えてしまったかのどちらかで、そういう場合は、芯が極端に短くなってしまっています。こんな時は、お手数でも、ローソクの燃える仕組みをご理解いただいた上で、ローソクの点火は、「芯の根元のロウを溶かすようにゆっくりと行う」ようにしてください。こうすれば、2の不安定な状態が省略され、毛細管現象がすぐ始まりますから、点火がたいへんスムーズです。さらに、芯の?さが5ミリ以下の場合は、頭の部分を溶かして芯を?くしてから点火してください。

ローソクの燃焼時間は?

溶けたロウを芯が吸い上げる仕組みはお話ししましたが、例えば、ローソクを水槽、その下端につけたパイプを芯と考えてください。パイプの直径が太ければ、水槽が空になるまでの時間(燃焼時間)は短く、細ければ?時間かかります。一般的には、芯の太さ(吸い上げ能力)と炎の大きさは正比例し、燃焼時間は反比例の関係にあると言えます。技術的には、芯の構造や編み目の強弱、薬品加工により、炎の大きさや燃焼時間の調整を行います。

厳密に言えば、使用後の温度、湿度、風の条件が、燃焼時間に微妙な変化をもたらします。一対で使われるローソクの燃焼時間が著しく異なる時は、ローソクの中に芯の継ぎ目が入り、その部分の芯が太くなっている要因が考えられます。当社のローソクは、特殊な技術によって、この継ぎ目が一切残らないようつくられています。

煙と涙?

油煙とロウ垂れの問題は、特に直径3センチ以上の大型ローソクに於いてむずかしい局面となります。

芯はパイプと考えれば、パイプである芯を太くすれば涙を流さない理屈ですが、副作用として不純な煙を発しがちです。このローソクは?外用でドリップレス、これは室内用でスモークレスと、目的別のローソクをつくれば理想的ですが、技術的には融点を高くしたり、特殊な構造の芯を使ったりしてコントロールしています。油煙は、炎の中の炭素が酸素不足により不完全燃焼のまま炎の外へ出るという現象ですから、炎が完全燃焼できる以上の量が吸い上げられた時、油煙が出ることになります。また、炎に風があたった時に油煙が出るのも、風によって冷やされた炭素が、不完全燃焼のまま出てくるからです。


当社のローソクは炎の美しさを第一に、無風状態で完全燃焼することを基準にバランスを追求しています。燃焼中のローソクには、できるだけ風を当てないようにしてください。

美しい炎・・・

Aのイラスト:カーボンが溜まった炎が黄橙色のイラスト、B:白金色の火の燃焼効率のいいロウソクのイラスト

ほの暗い静寂の中で燃えるローソクの炎をじっと見ていると、心がなごんでくるのがわかります。これは、ローソクの光が他の光源と比べて目にやさしく、時折かすかに揺れる静かな炎が、心の緊張をときほぐしてくれるからです。よいローソクは、炎が優雅な形状を保ち、いつも同じ大きさ、明るさで一定時間完全燃焼いたします。


さらに炎を美しく燃焼させるためには、いつも炎の形が一定であることが不可欠で、芯の吸い上げ量と燃焼量とがいつも一定でなければならないのはこのためです。その他の要因は外的条件でしょう。当社で燃焼試験をする時は、室温18度から20度、無風状態でテーブルの真中にローソクを置き、不自然な空気の流れが起きないよう注意して行います。


Aの炎は、芯が炎の中で直立しやすく、液面から上の芯の?さが?くなったり、短くなったり、絶えず変化しますから、炎が大きくなったり小さくなったりを繰り返しながら燃えていきます。芯の先端にカーボンがたまりやすく、これが液面に落下して芯にからみますから、毛細管現象をさまたげ、ロウ垂れや炎が急に小さくなる原因になります。燃焼時間が一定せず、炎が?橙色です。


Bの方は、芯が炎の中で直角に近い角度まで曲り、その先端が炎の外輪に止まります。芯の先端が一番高温の外周にあり、ローソクの燃焼とともに芯も完全燃焼し短くなっていきます。液面から上のカーボン状になった芯の?さがいつも一定ですから、明るさと燃焼時間も 一定。炎は優雅な形を保ち、色は白金色となります。

芯のはたらき・・・

良い燃焼のためには、ローソクの直径、融点に芯が合っていることが大事なポイントです。芯によって、時間、炎の形、明るさの調節が自由にできます。基本的には、二十番手の綿糸を組み合わせて芯をつくりますが、構造は六から八本の芯を縒ったものや、三つ編にしたもの、袋状に編んだ芯の中にさらに縒った芯が入っているもの、断面がD型状に編まれたもの等、それぞれ炎の形や明るさに特色があります。

例えば、少し炎を大きくしたい時、三つ組のうち一組の本数を一本増やして吸い上げ量を多くします。硼酸やリン酸アンモニウムなどの薬品の中に芯を浸して、炎の中の芯の曲り角度を調節することもできます。特に大型ローソクで油煙を防ぐ際には、多目の芯を、テンションを強く編み、薬品で芯をフィルター状にして、いつも同量のロウが芯を昇るように調節します。目的に応じて、現在当社が使用する芯は100種類以上にもなります。ローソクを消す時は次の燃焼のために、大切な芯を損なわないようにご注意ください。

皿のロウがこぼれないのは?

燃焼中のローソクの上部に、お皿状のものができます。これは、炎の熱で溶けたロウが芯を昇る前の予備軍として待機している状態ですが、炎の熱のためローソクの側面を冷たい空気がひっぱられて上昇し、お皿の縁を冷やすので、お皿のカタチが保たれるわけです。

しかし、風が吹くとこのバランスがくずれて、ロウ垂れの原因となりますし、ローソク同士をあまり近づけすぎても、熱や上昇気流に変化が出てよくありません。良い燃焼のためには、風は絶対禁物です。

お尻の穴はどうやってつくるの?

可愛いお灯明から寺院用のジャンボサイズまで、それぞれのローソクに適正な穴が求められますが、実はこの穴は、一本一本あけているのではありません。水が氷になる時は体積が膨張しますが、パラフィンワックスは逆に個体になると約85%に収縮します。例えば、空き缶いっぱいに流し込んだロウが、しばらくすると中心がへこんできたり、表面が固まっていても中が空洞になっていることがあるのもこのためで、実はこの特質を利用してお尻の穴をつくっています。


日本の神仏用の燭台は、竹串に和紙といぐさの灯心を巻いてつくる和蝋燭の製造以来、針でローソクを内側から固定する方式ですが、欧米では最初に獣脂や蜜蝋などの収縮の少ない原料でローソクをつくったために、燭台は周りから固定するホルダー式が現在も使われています。


型へ流し込む時のロウ液の温度やシリンダーの冷却水の水温、型抜きのタイミングなどによる収縮の度合いはたいへん微妙で、昔は職人さんの勘に頼って穴をつくってきましたが、現在ではコンピュータによる制御が行われています。

燭台とお尻の穴

使用上の安全面から、穴と燭台が合致していることが大切です。さらに、穴の直径と奥行きが針とピッタリ合って、ローソクの底辺と燭台の間に隙間がない時は、最後にロウが全部溶けてしまっても、燭台の上の液状になったロウを、針に寄り添う芯が最後の一滴まで吸い上げる完全燃焼が可能となります。したがって、ローソクの大きさに合った燭台をお選びいただくのが理想的です。


燭台を清潔に気持ちよくお使いいただくためには「燭台マット」をお使いください。小ローソクをお使いの方には、当社の安全燭台「もえ」「やすらぎ」「アーバン」をお使いください。特許の技術で、ローソクを完全燃焼させ、ロウが残らず安全です。

お客様使用の穴をつくります

ローソクの穴と燭台の針が合わなくて困ったことはないでしょうか?


現在、当社ではすべてのローソクをコンピュータで製造しています。正確なシステム制御が、ローソクの色相、芯の?さ、穴の構造などの製品属性を均一で安定したものに仕上げています。大型のローソクは、お客様好みの穴をつくる特注もお受けできます。対象商品は、7.5号、15号、30号、50号、100号です。5ケース以上よりお願いします。

もしロウが付いたら・・・

燭台や器にロウが付着した場合は、80度のお湯に漬ければすぐ溶けます。お湯をそのまま捨てると、排水管が詰まることがありますので、浮いたロウはティッシュでとってから流してください。


衣服に着いた時は、上下に新聞紙を置いてアイロンをかければ、溶けて新聞紙が吸い取ります。さらに残るようなら、80度のお湯に入れてください。

きれいに安全に
灯すために

灯すとき・・・

  • ◆まず芯をまっすぐにのばし、芯の根元の部分のロウをゆっくりと溶かし、毛細管現象が起きやすいように点火してください。
  • ◆芯の長さは約1センチが適当ですが、極端に短い時は頭を火であぶって芯を長くしてからお使いください。
  • ◆燃焼中に芯が長くなって炎が大きくなり過ぎた時は、すぐに消火して、芯を1センチに切ってから再点火してください。
良い点火位置のイラスト

消すとき・・・

  • ◆ローソクを消す時は、次の燃焼のために大事な芯を損なわないようご注意ください。特にロウ消し器で消す時は上から芯を押さえないようご注意ください。
  • ◆風は燃焼のさまたげになります。美しく灯すためには風をあてないようご配慮ください。
  • ◆ローソクの上部にできる皿の中へマッチ棒などの可燃物を絶対に入れないでください。それ自体が燃えてしまいますので危険でもあり正常な燃焼ができません。芯の燃えかすが皿の中へ落ちた時も必ず除いてください。
火の用心。
ローソクが燃焼中はそばを
離れないでください。